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台湾迎賓館
台湾の地に日本庭園を作り上げるという壮大な計画の中で、庭園を愛でるための迎賓館をつくる。
日本古来の自然観によって形成されてきた庭園と建物の関係性は、どちらか一方が強調されることなく、「自然との調和」を第一に考えられてきた先人たちの知恵の結晶である。日本とは自然環境が異なる台湾で、先人たちの知恵を最大限に活かしつつ、建設に当たっての課題となる強い風、高湿度などの対策を考慮しながら、いかに「自然との調和」を生み出していくかが課題となる。
回遊式庭園はあらゆる角度から建物を眺めることになる。外観では屋根を二つに分け、棟の向きを変えながら、どの方角から見ても控えめな佇まいになるよう配慮した。また、むくり屋根を採用することで、全体として柔らかく穏やかな印象をもたせた。建物に至るアプローチは、軒高を低く抑えた緩勾配の一文字葺き屋根とすることで、建物の重心を低く見せ、訪れる人々を控えめに迎え入れる。
格子戸をくぐり玄関土間に入ると、庭への視線は一旦遮られ、木とじゅらく壁でつくられた柔らかい空間が出迎える。自然素材による設えは、自然との繋がりを重視してきた日本の歴史を感じさせると同時に、職人の高い技術でつくられた空間は、日本の建築がいかに職人の技術、手仕事の痕跡を大切にしてきたかを伝えてくれる。奥座敷の手前に取次の間を設け、障子越しに見え隠れする外の景色を意識させるように心がけた。奥座敷への扉には日本の伝統技法である組子障子を設け、繊細な透け感によって奥行きが感じられるようにしている。奥座敷では、三方をガラスで開放し、庭園の風景を最大限に取り入れるように計画した。内部空間と外部空間が自然に繋がるよう、縁側や低い軒屋根、柱といった要素が意図的に配置されており、これらの要素がフレームとして機能することで、庭園の風景が一幅の絵画のように見える仕掛けとなっている。
常に「自然との調和」を大切にしてきた日本の自然観は、外(庭園)との関係性を第一に考え、謙虚な姿勢を保ちながら自然と建物を作り上げてきた。また、建物は完成時が最も美しいわけではなく、経年変化を経てさらに味わいを持つものと考えている。厳しい環境の中でどうすれば日本の建築が建ち続けられるか、強風に耐えうる木の組み方や瓦屋根の止め方、高湿度への対応策など、細部に至るまで周到な工夫が施されている。それでも、自然環境に完全に抗うことなく、時間とともに変化する素材の美しさを受け入れる設計が建物のさらなる魅力を引き出してくれることを願っている。
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