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千里丘の家
構造:木造 延床: 家族構成:2 施工:
広葉樹材による軸組木造の新築計画。
かつて日本の住宅文化に存在していた「家ぼめ」。住宅には必ずと言っていいほど和室がつくられ、腕の良い職人に高い技術力を存分に発揮してもらい、床柱をはじめ使われる材料には一級品の銘木を用い、主人は招いた客人にその高度な技術と材料の希少価値を話し、客人は自身の知識をもってその設えを褒めるというものである。こうして銘木といわれる木材をはじめ、価値ある材料とそれを活かすことのできる高い技術力を持った職人が住宅文化をつくり上げてきた歴史があった。近年、きちんとつくられた和室も少なくなり、汎用性のある材料とコストを重視した住宅づくりにその座が移行し、かつての銘木は長い年月、材木屋の倉庫に眠ることになる。本プロジェクトでは、数十年倉庫に眠ったままの銘木といわれる紫檀、黒檀、鉄刀木、花梨といった広葉樹材を、建具職人でもある施主が全国の材木屋から集めて住宅資材として生かすことを考え、床柱ではなく住宅を支える構造材として、その材木がもつ本質的な魅力を引き出すことを構想している。堅木の広葉樹は杉や桧といった針葉樹と比べて、比重が重く、材自体も非常に硬質となる。この硬さと比重を活かした木造の組み方を大工と知恵を絞りながら、考えていく。この先、何百年後にいつか解体される時に大工の手刻みで組まれた材木は丁寧にばらされ、再利用可能な材として新たな命が吹き込まれることで、資源を遠くまで持続させることを構想している。節約だけが環境と向き合うものではなく、永く使い、また再生できることも環境と向き合う術と考えている。
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