一級建築士事務所 田野
建築設計室

構造：木造　延床：100㎡(5LDK)　家族構成： 　施工：K-craft

古い木造住宅の改修。
クライアントが幼少時代を過ごした生家には深い原風景が残っている。そんな原風景の痕跡を日々の暮らしの中に点在させ、家と住まい手の過ごした時間をその先に繋げていくことを建築の役割として考えた。
古い家でまず確認することは建物の健康状態を探ること。痛んでいる箇所、補強が必要な箇所を丹念に見て回る。耐震補強を行う上で特に大切にしていることは、今ある骨組のポテンシャルを活かすこと。既存の骨組が持っているポテンシャルを引き上げるように、貫工法による粘りを持たせた耐震壁を適所に配置し、土壁がしっかり残っている箇所にはバラ板による補強、揺れに対して応力が集中する柱梁の仕口を金物補強することにより、既存の骨組に現役続行の機会を与えるように耐震補強を施している。内部は全面改修としながら真壁の設えを継承して、当時の職人が丁寧に作り上げた部分を活かすことで新旧が馴染んでいくように考えている。
カーテンで閉ざされて見えなくなっていた裏庭のニシキギは、新たに設けた大きな窓からきれいな枝ぶりを見せてくれた。